ビルのB工事・C工事と工事区分表の読み方|ビル指定業者の見積もりで確かめること・交渉できること
ビルや商業施設の区画を借りて店を出すときは、内装などの工事が「A工事」「B工事」「C工事」の3つに分けられていることがよくあります。この分け方によって、工事の会社を誰が選ぶのか、費用を誰が払うのか、できあがった設備が誰の持ち物になるのかが決まり、その分け方を一覧にした書類を「工事区分表」と呼びます。
結論
- B工事の会社は、店の側では選べません。ただし、工事を注文するのは店なので、数量と単価の入った見積書を求めることはできます。
- B工事の金額を下げるいちばん確かな方法は、ビルの設備を動かさない店の配置にして、B工事の項目そのものを減らすことです。
- どの工事がBかCか、出ていくときにどこまで元に戻すかは、建物と契約ごとに違います。部屋を借りる契約の前に、工事区分表と契約書の原状回復の条項を並べて確かめてください。
同じ「エアコンを付ける工事」でも、建物によって区分が変わります。たとえば、仙台市と川崎市が公開している店舗区画の工事区分表では、次のように違います。
同じ空調の工事でも、建物で区分が違う(仙台市と川崎市)仙台市の施設の店舗区画
- ・エアコンの機器を付ける工事はB工事
- ・B工事の会社は市が決め、注文して払うのは借りる人
- ・B工事でつくった部分は、原則として市の持ち物
川崎市役所の店舗区画
- ・エアコンの室内機・室外機を付ける工事はC工事
- ・C工事の会社は、借りる人が選ぶ
- ・B工事・C工事でつくった部分は、借りる人の持ち物
ほかの建物の工事区分表を見ても、自分が借りる建物の分け方は分かりません。なので、候補の物件が決まったら、まずその建物の工事区分表をもらってください。
工事区分表の読み方
工事区分表は、たいてい2つの部分でできています。1つはA・B・Cのそれぞれについて「誰が注文し、誰が工事し、誰が払い、誰の持ち物になるか」を書いた定義の表で、もう1つは床・壁・電気・空調・排水といった工事の項目ごとに、どこまでがA工事でどこからがB工事・C工事かを書いた一覧です。
仙台市の店舗区画の工事区分表を例に、見てほしい欄に印を付けると次のようになります。
工事区分表の見本(仙台市の表の書き方をもとにした例)数字は仮
| 工事区分 | A工事 / B工事(別途工事) / C工事(別途工事) | ① |
| 資産区分 | 仙台市 / 仙台市(※) / 借受者 | ② |
| 費用負担 | 仙台市 / 借受者 / 借受者 | ③ |
| 発注者と施行者 | B工事は、発注者が借受者、施行者が仙台市指定業者 | ④ |
| 空調機設備 | B工事の欄に「空調機器工事」 | ⑤ |
| 柱・壁の備考 | A工事は変更できません。 | ⑥ |
- ①「別途工事」は、ビル側の基本の工事とは別に、借りる人の費用で行う工事という意味
- ②工事でつくった部分が、最後に誰の持ち物になるか。(※)は、借りる人が持ち込む空調機などは借りる人の物、という注記
- ③「借受者」は、部屋を借りる人(店)のこと。B工事の費用もC工事の費用も、店が払う
- ④B工事は、注文して払うのは店で、工事をするのはビル側が決めた会社
- ⑤自分の店で使う設備が、どの行のどの欄に書かれているかを1つずつ探す
- ⑥「変更できません」と書かれた部分は、お金を出しても動かせない
定義の表で特に見てほしいのは、「資産区分」の行です。仙台市の表ではB工事でつくった部分が原則として市の持ち物になる一方で、川崎市の表ではB工事の部分もテナント(借りる店)の持ち物になっていて、どちらになるかで、出ていくときに撤去するのか置いていくのかの話し合いが変わります。
項目ごとの一覧では、次の書き方にも気をつけてください。
- 「A工事の変更」「増・移設工事」と書かれた項目は、ビルにもともと付いている設備を動かしたり増やしたりする工事です。仙台市の表は、B工事を、主にA工事の変更や増設・移設と、A工事に影響する工事だと定めています。
- C工事の欄にあっても、工事の会社が決められている項目があります。仙台市の表では、電話と光回線の工事について、工事の会社は施設側が指定すると書かれています。
- 火災報知器やスプリンクラーなどの防災設備は、店の配置によって、増やしたり動かしたりする数が変わります。
B工事の見積書で確かめること
B工事はビル側が決めた会社が工事をしますが、工事を注文して代金を払うのは店です。仙台市の表でも川崎市の表でも、B工事の発注者は借りる人(テナント)になっています。
なので、店はB工事の会社に対しても、工事を注文する立場として建設業法の決まりを使えます。たとえば、建設業の許可を持つ会社には、契約が決まるまでに、材料費や作業の費用などの内訳を書いた見積書を出してもらうよう求めることができます。
B工事の見積書は、たとえば次のような書き方で届きます。
B工事の見積書の見本(よくある書き方の例)数字は仮
| 空調機器工事 | 一式 1,200,000 | ① |
| エアコンの配管の工事 | 一式 450,000 | ① |
| 火災報知器の増設・移設 | 一式 300,000 | ② |
| 夜間作業の割増 | 一式 180,000 | ③ |
| 設計・監理費 | 一式 240,000 | ④ |
- ①「一式」は、中身をまとめて1つの金額にした書き方。機器の型番と台数、管の長さなど、数量と単価の内訳を出してもらう
- ②店の配置のどこが原因で、何個増やす・動かすのかを、図面に印を付けて示してもらう
- ③作業できる時間がビルの決まりで夜に限られるのか、日程しだいで昼にできるのかを聞く
- ④「監理」は、工事が図面どおりに進んでいるかを確かめること。何を設計し、何を確かめるための費用なのかを、項目の名前で書いてもらう
内訳がそろったら、C工事を頼む内装の会社にも見せて、「この項目は、どの設備のどんな工事ですか」と読んでもらってください。そうすると、自分の店の配置が原因で増えている項目を見つけやすくなります。
B工事の代金も、内装の工事と同じく、1つの会社との契約で500万円以上になるなら、その会社は工事の種類に合った建設業許可を持っている必要があります。許可の確かめ方は、店舗の内装工事と建設業許可で、国の検索画面の見本つきで説明しています。
交渉できること・できないこと
B工事の見積もりが高いと感じても、店の側だけでは変えられないことがあります。その一方で、店が確かめたり頼んだりできることもあるので、先に線を引いておくと、話し合いに時間を使いすぎずにすみます。
B工事で、店の側からできること・できないことできないこと
- ・B工事の会社を、店が選んだ会社に替える
- ・「変更できません」と書かれたA工事の部分を動かす
- ・B工事と決まった工事を、店の判断だけでC工事にする
確かめる・頼めること
- ・数量と単価の入った内訳を出してもらう
- ・店の配置を変えて、B工事の項目を減らす
- ・一部をC工事にできないか、ビル側に相談する(決めるのはビル側)
- ・契約書と、変更のときの書面を交わす
この中で金額にいちばん効くのは、B工事の項目そのものを減らすことです。B工事は「ビルにもともと付いている設備を動かす・増やす工事」が中心なので、ビルの設備をそのまま使える配置にすれば、そのぶんB工事の項目が減ります。
たとえば、店の中に壁(間仕切り)を増やすと、区切った部屋ごとに火災報知器やスプリンクラーを増やしたり動かしたりする工事が要ることがあります。川崎市役所の店舗区画でも、間仕切りを付けることに伴う防災設備の増設・移設と消防の検査が工事の項目に挙がっているので、内装の会社と配置を考えるときは「ビルの空調の吹き出し口や火災報知器を動かさずにすむ配置にしたい」と最初に伝えておくと安心です。
賃貸借契約と原状回復
部屋を借りる契約(賃貸借契約)が終わって出ていくとき、借りた人は部屋を元の状態に戻すことになっていて、これを「原状回復」と呼びます。どこまで戻すかは、法律の決まりと、契約書と工事区分表の中身で決まります。
原状回復の範囲が決まるもの法律(民法)の基本ふつうに使って傷んだ分と、年数による傷みは除く
↓→契約書の条項「借りたときの状態に戻す」などの書き方
↓→
法律の基本では、ふつうに使って傷んだ分と、年数がたって傷んだ分は、戻さなくてよいことになっています。ただし、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は民間の賃貸住宅についての指針なので、店の契約にそのまま当てはまるとは限りません。
そのガイドラインの中でも、オフィスビルの賃貸借で、契約の原状回復の条項に基づいて、ふつうに使って傷んだ分まで元に戻す義務があるとした東京高等裁判所の判決(平成12年12月27日)が紹介されています。なので、店の契約では「契約書の条項の書き方が、そのまま戻す範囲になる」と考えて、契約の前に読んでください。
工事区分表のほうでも、仙台市の表と川崎市の表のどちらも、B工事とC工事でつくった部分は借りる人が元に戻すことになっています。つまり、入るときにB工事でエアコンや配管を付けたら、出ていくときにそれを外す工事の費用も店がもつ、ということです。
契約の前に聞くこと
工事区分表は、部屋を借りる契約を結んでからもらうのでは遅いことがあります。B工事の金額と、出ていくときに戻す範囲が分かってから契約できるように、次の順番で進めてください。
部屋を借りる契約までの順番- 1工事区分表をもらう申し込みの段階で、管理会社に「工事区分表と、館内の工事のきまり(工事の時間・届け出)をください」と頼む
- 2内装の会社と配置を考える区分表を内装の会社に渡し、ビルの設備を動かさずにすむ配置を考えてもらう
- 3B工事の見積もりをもらう配置の図面をビル側に出し、B工事の見積もりを数量と単価の内訳つきで頼む
- 4契約書の原状回復を読む戻す範囲、戻す工事の会社、B工事で付けた設備の持ち主を確かめてから契約する
管理会社やビルの持ち主には、次のことを聞いておくと、あとで「聞いていなかった」を防げます。答えは、メールなど文字に残る形でもらってください。
C工事を頼む内装の会社は、店舗内装の会社一覧から探せます。一覧に載っている25社の公式サイトを2026年10月17日に調べると、次のようになっていました。
会社一覧の25社の公式サイトを調べた結果
工事区分について説明している会社は少ないので、どの会社に頼む場合でも、見積もりを頼むときに工事区分表を見せて「B工事との境目の打ち合わせもお願いできますか」と聞いてください。出ていくときの原状回復工事まで同じ会社に頼みたいときは、各社のページの「原状回復工事」の欄を見ておくと、候補を絞りやすくなります。
今日やること
- 1区分表を頼む候補の物件の管理会社に「工事区分表と館内の工事のきまりをください」とメールする
- 2自分の設備の行を探す空調・換気・排水・ガス・電気・火災報知器の行で、B工事の欄に何が書いてあるかに印を付ける
- 3B工事の内訳を頼むB工事の見積もりは「機器の型番と台数、数量と単価の内訳つきでください」と頼む