建物の工事を仕事として引き受ける会社は、国か都道府県から「建設業許可」という営業の許可を受けることになっています。ただし、代金の小さい工事だけを引き受ける会社は、この許可が無くても営業できます。そのため、店の内装を頼むときに許可を持つ会社を選ぶ必要があるかどうかは、工事代金がいくらになるかで決まります。
結論
- 工事代金が税込で500万円以上になるなら、建設業許可を持つ会社に頼んでください。
- 500万円以上かどうかは、見積書に書かれた金額だけでは決まりません。見積書の金額に、下の3つを足した額で判断します。
- 照明などの電気工事やエアコンの工事には、内装とは別の種類の許可が要ります。見積書にこれらの工事が入っていたら、「この部分はどの会社が工事しますか」と聞いてください。
- 1消費税見積書の金額が税抜なら、消費税の10%を足します
- 2分けた契約の代金同じ会社と「内装工事」「照明工事」のように契約書を分けても、分けた分を全部足した額で判断します
- 3店側で買って渡す材料床材や照明器具を店側で買い、会社に渡して取り付けてもらう場合は、その材料の値段も足します
- 見積書の工事代金(税抜)
- 460万円
- 消費税(10%)
- 46万円
- 店側で買って渡す床材
- 50万円
※ 数字は、数え方を説明するための仮のものです。
※ 見積書の460万円だけを見ると500万円より少なく見えますが、消費税と床材の代金を足すと500万円を超えます。この場合は、許可を持つ会社に頼む必要があります。
500万円以上かどうかの数え方
500万円と比べるのは、1つの会社と結ぶ工事の契約の代金です。たとえば内装はA社、電気工事はB社のように、別々の会社とそれぞれ契約するなら、A社との契約とB社との契約を、それぞれ別に500万円と比べます。一方、同じ会社との契約をいくつかに分けた場合は、分けた契約の代金を全部足してから比べます。
店を開くのにかかる費用は、公的な調査で見ても、500万円の前後にあります。日本政策金融公庫の調査では、次のような数字が出ています。
| 日本政策金融公庫の調査 | 金額・割合 |
|---|---|
| 店を開くのにかかった費用の中央値(金額の順に並べたときの真ん中) | 600万円 |
| 店を開くのにかかった費用が500万円未満だった割合 | 4割以上 |
| 美容室の内装・外装の工事費 | 平均423万円 |
上の2行は2025年度の調査で、工事代だけでなく、店を開くのにかかった費用全部の数字です。美容室の行は2012年度の調査で、美容室を開く費用のうち、半分近くが内装・外装の工事に使われていました。
見積もりが500万円に近いなら、最初から許可を持つ会社を選んでおくと、あとで迷わずにすみます。
ビルに入る店の工事の分け方(A・B・C工事)
ビルの中に店を出す場合、工事が「A工事」「B工事」「C工事」の3つに分けられていることがあります。誰が工事の会社を決めるのか、誰が費用を払うのかが、工事ごとに違うという分け方です。分け方は建物ごとに違うので、部屋を借りる契約をする前に、ビルの持ち主や管理会社から「工事区分表」(どの工事がA・B・Cのどれに当たるかを書いた表)をもらっておくと安心です。
たとえば川崎市役所の建物にある店舗の区画では、次のように決まっています。
A工事
- 建物にもともと付いている基本の部分
- 会社に頼むのも、費用を払うのも市
B工事
- ビル側が指定した会社が工事する
- 会社に頼むのも、費用を払うのも店
C工事
- 店が選んだ会社が工事する
- 会社に頼むのも、費用を払うのも店
この区画では、ビル側が会社を決めるB工事も、会社に頼んで費用を払うのは店の側です。また、B工事とC工事でつくった部分は、店を出ていくときに元の状態に戻す決まりになっています。
工事区分表の読み方と、B工事の見積もりで確かめることは、ビルのB工事・C工事と工事区分表の読み方で説明しています。
500万円以上かどうかは、A・B・Cの区分ごとではなく、契約する相手の会社ごとに考えます。
- B工事とC工事を同じ会社に頼むなら、両方の代金を足して500万円と比べます。
- B工事でビル側が指定する会社についても、許可を持っているかを同じ国の検索で確かめられます。
居抜きの部屋とスケルトンの部屋
借りる部屋の状態によっても、頼む工事の範囲が変わります。前の店の内装や設備が残ったままの部屋を「居抜き」、内装も設備も無い、がらんどうの状態の部屋を「スケルトン」と呼びます。
居抜き
- 前の店の内装や設備が残っている
- 前の店から内装や設備を買い取るなら、その値段の内訳をもらう
- 古い内装だけを壊す工事も、内装の工事として扱われる
スケルトン
- 内装も設備も無い状態から始める
- 内装・電気・空調・水道と排水の工事をまとめて頼むことになる
- 工事の種類ごとに、許可を持っているかを確かめる
居抜きの部屋でも、古い内装を壊す工事と新しく内装をつくる工事を同じ会社に頼むなら、両方の代金を足して500万円と比べます。また、前の店から内装や設備を買い取る代金は、工事の見積もりとは別のお金です。何をいくらで買い取るのか、内訳を出してもらって確かめてください。
前の店から内装や設備を買い取る契約(造作譲渡)で決めておくことは、居抜き物件の造作譲渡で説明しています。
工事の種類ごとに必要な許可
建設業許可は1種類ではなく、工事の種類ごとに分かれています。内装の許可を持っている会社が、電気工事の許可も持っているとは限りません。見積書の項目を、次の表と見比べてみてください。
| 見積書の項目 | 必要な許可の種類 |
|---|---|
| 壁・床・天井の仕上げ | 内装仕上工事業 |
| 造作(木でつくる作り付けの部分) | 大工工事業 |
| 照明・電気の配線 | 電気工事業 |
| 空調(エアコン)・水道と排水・厨房 | 管工事業 |
| 自動ドア・サッシ(窓やドアの枠) | 建具工事業 |
| スプリンクラー(火事のときに水をまく設備) | 消防施設工事業 |
- 店の中に付けるエアコンの工事は、「管工事業」の許可が必要な工事です。
- 「建築工事業」は、建物を丸ごと建てるような工事のための許可です。この許可しか持っていない会社には、500万円以上の内装工事だけを頼むことはできません。
内装の会社が、電気工事やエアコンの工事までまとめて引き受けること自体はできます。ただし、電気やエアコンの部分の代金が500万円以上になるなら、その会社は、その工事の資格を持つ技術者を置くか、その工事の許可を持つ別の会社に工事をさせなければなりません。
会社一覧の25社の許可を調べた結果
店舗内装の会社一覧に載っている25社について、2026年10月17日に、国の建設業者検索で許可を1社ずつ確かめました。
- 許可が「建築工事業」だけの会社:4社
- 電気工事業・管工事業の許可を持つ会社:0社
- サイトに書かれた許可番号が、国の検索で出てこない会社:1社
- 設計から頼める会社:22社
- 料金の目安をサイトに載せている会社:2社
建築工事業の許可しか無い会社には、500万円以上の内装工事だけを頼むことはできません。また、電気工事や管工事の許可を持つ会社はありませんでした。なので、見積書に電気やエアコンの工事が入っていたら、その部分はどの会社が工事するのかを聞いてください。
料金をサイトに載せている会社は少ないので、会社どうしを比べるには、見積もりを取る必要があります。
各社が持っている許可の種類と許可の期限は、会社一覧の各社のページで見られます。
国の検索で許可を確かめる方法
国土交通省の建設業者検索というサイトで、候補の会社を1社ずつ調べられます。会社の名前を入れるときは、「株式会社」「有限会社」などを外して入れてください。
検索で出てきた会社の、詳しい情報の画面を開くと、次のような欄があります。
会社の詳しい情報の画面の見本数字は仮
| 許可番号 | 〇〇県知事許可 第123456号 | ① |
| 商号又は名称 | (株)〇〇内装 | |
| 許可を受けた建設業の種類 | 建 1 / 内 1 / 電 空欄 | ② |
| 許可の有効期間 | R06年04月01日からR11年03月31日まで | ③ |
- ①見積書や名刺に書かれた許可番号と同じか
- ②「内」(内装仕上工事業)の下に1か2の数字があるか。1は「一般」、2は「特定」という区分
- ③工事が終わる日まで期限が残っているか。「R06」は令和6年(2024年)のこと